水元保育園では「子どもの主体性を育てる保育」を方針に掲げています。
とはいえ、主体性という言葉だけでは、私たちが日々どんなことを考えて子どもと関わっているのかは、なかなか伝わりにくいのではないかと思います。
そこで今回は、園が目指している子どもの姿と、そこに向かって子どもがどのようなステップで育っていくのか、そして年齢ごとにどんな関わり方をしているのかを、あらためてまとめてお伝えします。少し長くなりますが、園の保育の土台になっている考え方です。ぜひ最後までお付き合いください。
水元保育園では、以下の3つの子どもの姿を目指して保育を行っています。
①自己肯定感が育まれた子ども(自分も周囲の人も大切にできる子ども)
②自分で考え、行動する力を持つ子ども(主体性を持った子ども)
③好きなことを見つけてとことん取り組むことができる子ども(集中力がある子ども)
この3つは、それぞれ独立したものではありません。①が土台になって②が育ち、②があるからこそ③のような姿につながっていく。そういう関係にあると考えています。
現在保育園に通っている子どもたちは、15年後、20年後に社会へと飛び立っていきます。
社会の変化が著しい現代において、未来の世界を予想することはとても難しいと思います。では、未来を生きていく子どもたちにとって、どんな力が必要になるのでしょうか。その答えが、先ほどの「目指す子ども像」の3つにつながっていきます。
これからの時代、決められたことや与えられたことをこなす人間は求められません。技術の進歩やAIの発達により、これまで人間が担ってきた仕事をロボットやAIに任せるようになっていくにつれて、人間に求められる仕事そのものが変わってくるからです。
では、どんな人物が求められるのか。
それは【自分で判断し、行動できる人間】です。
少し具体的な例で考えてみます。
子どもが挨拶をしていないと、なんとかして挨拶をさせようとする場面に出くわすことってありますよね。仮に大人が物理的に子どもの頭を下げて挨拶させたとします。この行為は、果たして子どもにとってプラスに働くでしょうか。
「挨拶をする」という行為そのものは身につくかもしれません。しかし、自分の気持ちを伴った挨拶には繋がらないでしょう。
水元保育園では、「言われたから挨拶をする子ども」ではなく、「自分で考え、自分の言葉で挨拶できる子ども」に成長していくような関わり方をしていきたいと考えています。
子ども自身の言葉から生まれる挨拶を大切にしています
これからの時代に対応する力とは、自分で考えて行動する力(主体性)である。そして、主体性を持った人間に育つには幼少期の過ごし方がとても重要になる。だからこそ、長い時間を過ごす保育園での過ごし方や関わり方について考えていく必要がある。
ここまでが、前半でお伝えした内容です。
ただ、目指している子ども像になるまでにはいくつかのステップがあり、年齢や発達段階ごとに、必要な関わり方は大きく変わってきます。大まかに分類すると、子どもは次の4つの段階で成長していきます。
ステップ1:情緒の発達と安定
ステップ2:自主性の発達
ステップ3:社会性の発達
ステップ4:知識の習得
これを、保育園に通う年齢ごとに当てはめてみると、概ね次のように表せます。
ステップ1:0歳児~
ステップ2:1歳児~
ステップ3:3歳児~
ステップ4:4歳児~
もちろん、2歳以上の子どもでも情緒の安定は大事な要素ですし、1、2歳児の子どもが遊びの中で学ぶ姿もたくさん見られます。あくまで「その年齢の子どもにとって、どの要素が一番必要なのか」の目安としてご覧ください。
ここからは、ステップごとの関わり方についてお伝えしていきます。
この時期の子どもとの関わりで大切にしていることは、特定の保育士(担当保育士)が中心に関わり、1対1の信頼関係を築くことです。
1対1の信頼関係ができると、徐々に保育園が安心できる場所になり、他の先生や友だちにも目が向くようになっていきます。
排泄や食事、睡眠などの生理的欲求を満たしてもらおうと泣いて訴えた際、その気持ちを受け止めてもらう経験を通して、子どもは「自分は大切にされている」ことを実感します。こういった経験は、小さい年齢の子どもにとってとても大切な経験です。抱っこなどのスキンシップを存分に取ってあげることも、「大切にされている」と感じる大きな要素になります。
情緒の安定は、生きていく中でのベースとなる力であり、多く育てばその分だけ人生が豊かになる力です。園では0、1歳児はもちろんのこと、全年齢の子どもに対して、情緒の発達と安定に繋がる関わり方を心がけています。
自主性の発達といえば、代表的なものに「イヤイヤ期」が挙げられます。
イヤイヤ期は、自主性が芽生えてきた証とも言えます。イヤイヤ期に入ると“何でも自分でやりたがる”姿が見られます。これも意欲、つまり自主性の表れと言えるでしょう。
この時期の子どもとの関わりで大切にしていることは、たった1点です。
主張や意欲を大切にし、気のすむまでやらせてあげる
この1点だけを意識して関わります。まあ、この1点を保証することがとても難しいのですが……。具体的にどのように関わっているのかを、次から説明していきます。
子どもの意欲を大切にするにあたって必要なのが、縛りをなくすことです。特に時間の縛りがあると、子ども一人ひとりの声や主張に耳を傾ける余裕がなくなります。
保育園生活であれば、「散歩に行く時間を設定する」「昼食の時間を設定する」などが挙げられます。
例えば、散歩に行く時間を厳密に守ろうとすると、子どもの「自分で靴下や靴を履きたい」という思いに応えられなくなります。同様に、昼食の時間を守ろうとするあまり、午前中の活動の逆算が始まって、いろいろな時間の制約が生まれてくることもよくあります。
このような状態では、子どもの意欲を大切にする保育は難しくなってしまいます。
子どもと関わる際に意識していきたいのが「不必要な援助」です。不必要な援助とは、大人が手を出さなくてもいいことに手を出してしまうことを指します。
子どもが苦戦している場面を見かけると、やってあげたくなることがあると思います。手伝うことが悪いわけではないですが、なんでもやってあげていると、子どもの自主性は育たなくなります。また、時間に追われていると、大人の都合で援助をしてしまうこともあるかもしれません。
特に自主性の育ちだす1~2歳児クラスでは、“不必要な援助”をしすぎないように意識し、関わり方や援助の仕方を日々考えています。
独り占めはよくないか? と問われたら、大人の感覚では「よくない」と答える人が大半かと思います。
ただし、これは大人が何かを独り占めしていた場合の話であり、子どもの場合は話が変わります。特に自主性が育ち始める年齢の子どもにとっては、「〇〇ちゃんにも貸してあげようね」などという声掛けは、全く必要ありません。
このような話をすると、「そんな対応をしているとわがままな子に育ってしまう」というご意見をいただくことがあります。そういった思いのある方は、その子が成長のためのステップをしっかりと踏んでいるな、と考えてみてください。
実際、「一人で使いたい」という思いを十分に保証してもらっている子どもは、その経験があるからこそ【自分から友だちに物を貸してあげる】子どもになります。
自分の主張を受け止めてもらった経験を積んだ子どもは、自己肯定感が育まれていきます。自己肯定感が育まれると、他人と比較をして自分の存在意義を確かめる必要がなくなります。その結果、友だちに対する思いやりが自然と育っていきます。
子どもたちは成長していくにつれ、自然と個から集団になっていきます。個を伸ばす時期に、集団で必要なことを教える必要はありません。
おもちゃの独り占めでトラブルになっている時にかける第一声は、「お友だちも使いたいみたいだよ」ではなく、「一人で全部使いたかったのかな?」。園ではそういった関わり方を心がけています。
ステップ1、2は主に子どもと大人との関わり方についての内容でしたが、ステップ3、4は主に子ども同士の中で育つものです。ステップ1、2がしっかりと培われていれば、自然と育っていくものでもあります。
ステップ1の中で、情緒の発達と安定は家庭で育つ部分が大きいという話をしました。それとは反対に、社会性の発達に関しては、保育園に通う中で育つ部分が大きくなっています。社会性は、友だちとのやり取りや関わりの中で成長していくものだからです。
2~3歳児クラスになると、徐々に言葉でのやり取りが増え、友だちと一緒に遊ぶ姿も増えてきます。もちろん初めのうちは友だちとのやり取りが上手くいかずにトラブルに繋がることもよくありますが、そういったときは保育士が気持ちの代弁をしながら、相手の子に伝えていきます。
こういった援助を受けながら、友だちとのやり取りを積み重ねていく中で、社会性は発達していきます。そのため、個から集団へとなっていく年齢では、困っている時に援助をしてあげる程度の関わりを意識しながら保育をしていく必要があります。
保育園でも、大人がつい手助けしたくなる場面はよくあります。しかし、場合によっては手を出さないほうがいいことがあると理解し、「こういった場面では、どのように手を差し伸べればいいのか?」といったテーマを日々話し合って検討しながら保育を行っています。
興味を持ったことに対して本で調べたり、大人に尋ねてみたりといった姿は、4歳頃から特に増えてきます。
昆虫に興味を持った子どもが散歩に行く際、図鑑を持っていって名前を調べる。そんなふうに、興味を持ったことにとことん没頭する姿がだんだん増えてきます。そして、没頭する経験を通して集中力が養われていきます。
ただし、知識の習得は幼児クラスの年齢に限った話ではありません。なぜなら、人間は知識欲を持って生まれているからです。生まれ持ったものなので、当然0歳児にも同様に備わっています。
年齢の小さい子どもが学ぶ方法としては、主に「見て学ぶ」ことが挙げられます。家庭であれば家族の姿から、保育園であれば保育士や同年齢・異年齢の子どもたちを見て学んでいます。
大人からすると、知識という言葉からは、いわゆる勉強を思い浮かべるのではないでしょうか。しかしながら、子どもにとって大切な知識は、遊びの中で学んだ経験を指します。大人がイメージする遊びとは違い、幼少期の子どもにとっては遊び=学びなのです。
思い切り遊ぶ中で、主体性や創造性、社会性、集中力、道徳心、好奇心、危険察知能力といった様々な力が育っていきます。これらの力は総称して《非認知能力》と呼ばれています。
興味を持ったことを図鑑で調べる子どもたち
非認知能力とは「(他人に)認知されない能力」を指します。反対に、学校のテストやIQテストなどの数値で見える能力は、認知能力「(他人に)認知される能力」と呼ばれます。
大人が子どもを見る際、どうしても目に見えて賢くなったと感じる認知能力を重視してしまいがちです。しかしながら、幼児期に認知能力を高めることは、その後の人生にほとんど影響がないことが近年わかってきています。
乳幼児期の子どもにとって大事な力は「考える力」や「集中する(何かに没頭する)力」などの非認知能力であり、こういった力は一生残っていきます。まさに人生の基盤に直結する力です。
非認知能力は乳児保育や幼児教育の観点で世界的に注目されている力であり、たくさんの研究成果が出ています。調べるといろいろと出てくるので、気になった方はぜひ調べてみてください。
また、この非認知能力が十分に育っていると、認知能力についても自然と育っていきます。“自分で考える習慣や探求心や集中力”が育っている子どもが認知能力も高められるのは、当然と言えば当然ですよね。
現在、水元保育園では環境に着目し、その整備に取り組んでいます。園庭整備では、自分の体と対話できる環境や判断力、自分で考える機会を増やすことを意識しています。室内環境や日中の活動では、どのようにすれば自分で遊びを決める力(思考力や判断力)が身についていくかを考えながら取り組んでいるところです。
子どもにとって「親」が特別な存在であることは当然であり、あらためて言うことではないかと思います。
特に、子どもの成長で根幹となる情緒の発達と安定は、保育園に通っているだけでは到底満たされません。ご家庭で『大切にされている』『気持ちを受け止めてくれる』と日常的に感じることが、子どもの自己肯定感を育むうえで必要になってきます。この部分に関して、保育園でできることはとても限定的です。
子どもの情緒の発達と安定は、人生を歩んでいく中で根幹となる部分です。保護者の皆様の助けが不可欠になってきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
「子どもたちの人生が少しでも豊かなものになっていってほしい」という思いは、保護者の方々と同じです。子どもを考えた前向きな話し合いや意見の交換を保護者の皆様としていければ、それはおのずと子どもにとっていい方向へと進むと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
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